「ボッチプレイヤーの冒険 〜最強みたいだけど、意味無いよなぁ〜」
第37話
環境整備編
<着せ替え人形>
「あるさん、あるさん、ユーリアちゃんたち泊めていい? 館創造の魔法儀式見せていい?」
「え? 何? まるん、何がどうしたの?」
ここはイングウェンザー城の地下第6階層、アルフィンの部屋区画にある彼女の寝室。そこではアルフィンがセルニアが図書館から発掘した40巻越えのファンタジー漫画をベットに寝転びながら読んでいた
普段はNPCたちの手前、だらしない格好はあまり見せない(つもりでいる)彼女だがここは私室である。掃除などでメイドが立ち入る事はあるがアルフィンが在室している時は誰も立ち入る事がないので、今はTシャツにスウェットパンツと言う普段では考えられないラフな格好をして、なおかつベットでごろごろしていると言う城の子達にはとても見せられないようなだらしない姿でくつろいでいた
そんなだらけきった状況の中、いきなりまるんから<メッセージ/伝言>が飛んでいたので慌てて受けた所、上のような興奮した声が聞こえて来た為に訳が解らずうろたえていると言うのが今のアルフィンの状況である
「あのねぇ、今ユーリアちゃん達とおやつを食べているんだけど、その時にユーリアちゃん達が洗濯小屋を作る儀式魔法の準備に興味を持ったの。それでねぇ、折角だからその魔法儀式をユーリアちゃん達にも見せてあげようって話になったの。そしたら、友達も呼んでいいかって聞かれたからいいよって答えたの。ねぇあるさん、いいでしょ?」
「あっうん、それはいいけど、確か今回の洗濯小屋を作る魔法ってまるんが担当するんじゃなかったっけ?」
前回は私がメインで行ったけど、今回はまるんが担当するはずだった。だからこそ、私は今自分の寝室で漫画を読んでくつろいでいた訳で
「うん、だからそれもできなくなったからあるさんに連絡してるの。あるさんが無理ならあやめ寄越して。でも、できたらあるさんに来てほしいなぁ。エルフのあやめなら子供が魔法使ってもおかしくないかもしれないけど、やっぱり大人のあるさんが儀式魔法の中心になる方が自然だからね」
「う〜ん、そう言う理由なら私が行かないとダメか」
チラッとベット横の机に詰まれた漫画を横目で未練がましく見ながらも、仕方がないかとあきらめてボウドアの館に行く事にする。あっ、でも泊まるとなるとそれ相応の準備が要るんじゃないかしら?
「ねぇまるん、お泊りするはいいけど何人くらいの子が来るの? それによっては準備も必要でしょ?」
「あっそうだね、ちょっと待ってね」
そう言うとまるんは一旦私との会話をやめる。この様子だと、どうやら隣にいるであろうユーリアちゃんに話しかけて何人くらいの子供たちが来るか聞いているみたいね。少し待つと話が終わったのか、またまるんの声がこちらに伝わってきた
「あのねぇ、ユーリアちゃんが自分で呼びに行くつもりだった時は女の子の友達だけを呼ぶつもりだったらしいんだけどぉ、でも私がメイドの子に行かせちゃったから多分男の子たちもみんな来たがるんじゃないかなって。だからもしみんな来たら、25〜6人くらいになっちゃうかもって言ってるよ」
「あら、それはかなりの大人数じゃない」
それでは寝る場所はともかく、館のメイドたちだけでは食事の準備や儀式魔法を見るための場所設営も大変だ。これは城から応援を送る必要がありそうね
「やっぱりそんな大人数だと、だめかなぁ?」
「もう呼びに言ってしまったんでしょ。なら今更中止にしたら子供たちもがっかりするだろうし、いいわよ。でも、その人数だと館の子達だけでは大変だろうから城から応援を送る事にするわ。それと子供たちが寝る場所だけど、本館は流石に開放できないから別館のA棟に泊まれるよう、館のメイドたちに指示しておいて。魔法を見る場所の設営をする子はこちらから私たちに先行して送るから。後、料理はぁ〜そうねぇ、流石にそれだけの人数分をとなるとそちらで作るには施設が足りないわよね。う〜ん、これはとりあえず保留で。また後で連絡するわ」
「うん、解った。メイドたちにはそう言っておくね」
まてよ、村の子供たちが魔法儀式を見るとなるとカルロッテさんのところに居る子供たちも見たがるわよね?
「あっまるん、村の子供たちがそんなに館前に集まって魔法儀式を見学するのなら、きっとカルロッテさんの所の子供たちも見たがると思うのよ。だから、カルロッテさんの所にもこういう集まりがあるから子供たち、参加しませんか? って連絡しておいて」
「りょ〜かぁい!」
こうしてまるんとの<メッセージ/伝言>は終了。儀式魔法を行う日暮れまでにはまだかなり時間があるとは言え、やる事も多そうなので早速行動に移る事にする。まずは部屋着であるTシャツとスウェットパンツを脱ぎ、下着姿のままクローゼットからピンクのドレスを出す。しかしここで私は、はたと気が付いた
「子供達の前で魔法儀式を行うのよねぇ。そうなると、ピンクのお姫様ドレスではなんか違う気がする」
前回のような村長だけに見せた儀式と違って、今回は大勢の前で魔法を披露する事になる。そしてユーリアちゃん達が見たいと言っていると言う事は、これはただ小屋を作るだけの実用魔法ではなく娯楽の一つとしての魔法儀式披露でもあると言う事なのよね。なにせ、まるんはユーリアちゃん達に儀式魔法はとても綺麗だから見せようと思ったのだろうから。それならばやはり徹底してエンターテイメント性を追及すべきだ
「うん、今回は服装も厳選すべきね」
そう考えると私は城内部だけで使われている通信アイテムを手に取り、即座にセルニアに連絡をした
「セルニア、聞こえる? すまないけど、今から衣裳部屋まで来てもらえるかしら」
「今からですか? はい、解りました」
前回のボウドア訪問の時の服選びではメルヴァに頼んだのに何故今回はセルニアを呼んだかと言うと、これが支配者としてや姫としての訪問をする服を選ぶのならやはり今回もメルヴァに相談するべきなのだろう。だけど今回はエンターテイメントとしての服選びだ。それならばやはりコンセプトパーティーホール責任者権店長であるセルニアに相談した方がいいと考えたからなのよ
と言う訳で取り合えず今は衣裳部屋で別の服に着替えやすく、しかしNPCたちの前に出るのに恥ずかしくない格好をクローゼットから選んで着替え、衣裳部屋へと移動する。するとそこにはセルニアだけではなく、なぜかメルヴァとシャイナが待っていた
「あれ? なぜシャイナとメルヴァが居るの? 私はセルニアを呼んだはずだけど」
「アルフィン、まるんから聞いたよ。ボウドアの村で子供たちの前で魔法を披露するんでしょ。そんな楽しい事に私を呼ばないなんて酷いじゃない」
「アルフィン様、私は今回の服選びにはあまり御役に立てないかもしれませんが、それでもアルフィン様が外に御出掛けになられるのであればご一緒したいと思い、駆けつけました」
シャイナは少しふてくされたように、メルヴァは恭しく頭を下げながらそう答えた。なるほど、二人とも付いて来たいからここに来たって訳ね。まぁそれはいいけど、う〜ん、メルヴァには色々な準備をしてもらおうと思ったんだけどなぁ。でも、そうなると彼女も服選びとかに時間を取られるからだめか。仕方がない、準備はギャリソンに頼むかな
「解ったわ。結構な数のメイドたちも同行するのだから今回はセルニアだけを連れて行こうと思っていたけど、4人で行きましょう。それじゃあセルニア、服選び、お願いね。魔法をかける時に光の粒が舞うエフェクトと下から上へ風が舞い上がる魔法を演出として一緒にかけるつもりだから、それを頭に入れてお願いね」
「セルニアさん、解っているとは思いますが、アルフィン様の品位が下がるような衣装はダメですよ。あくまで高貴なイメージはそのままに、しかし魔法を使う者の神秘性も感じられる衣装をお願いしますね」
「はい、任せてください」
私とメルヴァの言葉を受けて、セルニアは早速衣裳部屋のメイドたちに指示を飛ばす。それを横目に見ながらシャイナに
「シャイナ、あなたのドレスも何種類か用意させておくから、その間にギャリソンにまるんと連絡を取って状況を把握してもらって現地の準備をさせるメイドの派遣とそれに伴う天幕や客席、それに魔法の明かりの準備をするように指示を出してきて。後、ここに来る道すがらちょっと考えたんだけど、結構な人数が参加するみたいだから子供たちの食事の準備は人を送って館の厨房で作るよりも城で作って運んだ方がいいと思うのよ。だからそう手配するようにギャリソンに伝えてね。メニュー選びに関してはあなたに任すから」
「解った。あと、当然お菓子の準備も必要よね? 一緒に頼んでくるわ」
そう言うと、笑いながらシャイナは衣裳部屋を出て行った。メルヴァに指示を出すのなら衣裳部屋に来てもらえばいいけど、男のギャリソンでは流石にそうは行かないからね。それに指示と言っても食事の内容などは事細かく話さなければいけないから<メッセージ/伝言>で済ませる訳にはいかない
本来なら私が何とか時間を作って直接話すべきなんだろうけど、でも今回のお客様は幸いな事に子供達だ。ならばその食事の指示などは子供好きなシャイナにすべて任せてしまった方が、私よりもいいラインナップをそろえてくれるだろう。私の指示を聞いてすかさずお菓子も用意しなければと思いつくくらいだからね
こうして全ての憂いを絶った私は、後はひたすらメルヴァとセルニアの着せ替え人形になればいいだけである。そう思い、ドアから衣裳部屋の奥に目を移した瞬間、別の意味で憂いが生まれた
「こっこれ、全部試着するの?」
「はい、どれが一番アルフィン様にふさわしいドレスなのか、きちんと試着して頂きませんと解りませんので」
「当然ですよ! アルフィン様はエンターテイメント性をと仰いましたし、メルヴァさんからは神秘性を持ちながらも高貴なイメージを損なわないようにと言うご注文でした。おまけにエフェクト演出の指示まで頂いているので、それにあわせようと思うと色々なものを着て頂かないと完璧なコーディネートはできません」
複数の移動式ハンガーラックに掛けられた50着以上のドレスを背に、メルヴァとセルニアは鼻息荒くそう答える。そんな姿を見て「ああ、今回は本当に着せ替え人形にされるんだ」とあきらめ気味な憂鬱な気分になってしまった。おまけにセルニアたちの周りには衣裳部屋付きのメイドたちがいない。と言う事は、まさか・・・
そう思い、セルニアに恐る恐る聞いてみる
「ねぇセルニア、衣装はこれで全部・・・よね?」
「いえ、衣裳部屋には50000着以上の舞台用ドレスが仕舞われておりますので、今メイドたちが総出で御注文に沿った衣装を探しております。これはあくまで第一陣ですから、この程度の数では心許ないと御心配頂かなくてもまだまだ続々と届きますよ」
ごっ5万着ぅ〜!? ちょっと、それはいくらなんでも無理よ
「まっ待って、シャイナのドレスもあるし、それにメルヴァやセルニアも服を選ばないといけないでしょ」
「シャイナ様の分はすでに本人からお気に入りの真紅のドレスをと指示を頂いておりますし、私は前回同様メイドの姿でお供するつもりです」
「御心配ありがとうございます。しかし私もすでにアルフィン様やシャイナ様より目立つ事の無いよう、黒のドレスを用意させておりますから大丈夫です。時間の許す限り、じっくりとアルフィン様を着せ替え人・・・ゲフンゲフン、アルフィン様の御召し物を選ばさせていただきます」
メルヴァ、本音が駄々漏れだよ。はぁ、どうやら退路は絶たれたみたいね。仕方がない、おとなしく着せ替え人形になるとしましょう
■
散々セルニアたちに着せ替え人形にされ続けて結局時間は3時間を超え、計100着以上のドレスに着替えさせられているうちにタイムアップ。セルニア的にはまだまだ全然納得出来ていないみたいだけど、もう時間が無いのだから仕方がない。今までの中でセルニアから見て一番であると思うもので妥協してもらい、何とか開放された。しかし、まさかあのセルニアがこんな完璧主義者だったとは。まぁ、コンセプトパーティーホールの責任者なのだからエンターテイメントに関してはけして妥協しないと言う事なのだろうけど、流石にこれは予想外だった
でも良かったぁ、これが前もって決まっていた行事ではなくて。何日も前から決まっていたら、それこそ何着着替えさせられていたか解らなかったわ。これからはセルニアにうかつに服の事は頼まない方がよさそうね
とにかく、もう時間が無いのでセルニアが選んだドレスに着替える。セルニアとしては化粧もしたかったようなのだけど、別に舞台に立つ訳ではないのだからこれは断っておいた。だって、エンターテイメントとして見せるとは言ってもこれはあくまで儀式魔法(偽だけどね)なんだから、舞台のような厚化粧をするほうがちょっと変でしょ? まぁ、巫女として神楽を舞うとかならそれ相応の化粧もするかもしれないけど今回は流石におかしいよね
私が着せ替え人形にされているうちにシャイナはドレスに着替えていたらしく、準備万端の模様。衣裳部屋の隅で紅茶を飲んでいた。メルヴァとセルニアも、私の着替えを衣裳部屋付きのメイドに任せて各自各々の服に着替えている。そして私が着替え終わる頃には全員が準備を終わらせていた
「さて、それでは行きましょうか」
衣裳部屋に取り付けられている転移門の鏡を通って地下5階層にある転移の間へ。ここは幾つもの転移門の鏡が置かれている部屋で、この部屋からならイングウェンザー城のどの階層へも簡単に移動できるようになっている
これはこの城に住む者のほとんどが転移の魔法を使えない上に、城の名前が付いた場所ならばどこへでも転移ができるギルドの指輪を所持しているのは自キャラたちだけなので(統括者たちの場合、ギャリソンは常に地下5階層か地下6階層に居るし、メルヴァとセルニアは転移の魔法が使える為、そもそも必要が無い)誰でも簡単にメルヴァたちが住む地下5階層や私たちの住む地下6階層へ来られるよう、このような部屋が作られているの
それにこの転移門の鏡は片方を壊してしまえばもう片方から飛ぶ事はできなくなるから、転移地点を1箇所にしておけば不審者が複数侵入したとしてもこの部屋全体を魔法で壊してしまえば全ての鏡が使用不能になって転移門の鏡を進入路として使われる事は無くなる。一箇所に鏡の出口を固めてあるのはそういう意味合いもあるのよね
因みに城内部ではゲートを開く事は流石に阻害されているけど、一度中に入ってしまえば転移ができる者なら金庫と最深部以外なら魔法でどの階層のどの場所へでも普通に転移できるようになっているの。あっ当然メイドたちも含め、各自の私室へだけは転移の指輪でさえ直接飛ぶことは出来なくしてあるわよ。プライベートは大事だからね
実はこれ、城内部の転移もできないように設定もできるのだけど、そのギミックを使うと城の維持費が余計に掛かってしまうし、流石に外から直接城内部への転移する事は出来ないようにされてはいるから特に警戒の必要が無いと思われる時は切っているのよ。因みに、このギミックを動かすと城の中で転移魔法を使った者はもれなくある部屋に飛ばされるようになっている。まぁ、トラップの一種ね
また、城の敷地内への外からの転移も普段は城の門前に飛べるようになっている。本当は敷地外までしか飛べなくも出来るし、転移阻害自体は常にしているのだから禁止エリアの設定を広げても経費は変わらないのだけど、その設定だと普段の生活がかなり不便だし今の状態でも不審者が転移してきたら即座に見張りの者が城内部の転移不可のギミックを動かすようにと指示してあるから大丈夫じゃないかな? なんて思ってるの
まぁ、この世界では転移魔法なんて使える人はほとんど居なさそうだし、もし居たとしても見張りの子達だけで対処できそうだからギミックを動かさないといけないような機会自体、永久に来ないかもしれないしね
いけない、また話がそれてしまった
転移の間から地上1階層に飛び、そこから少し歩いてエントランスへ。そこの脇にある一室、控えの間にボウドアの村へと繋がる転移門の鏡が設置されていた。あっ余談だけど、ボウドアの館には二つ転移門の鏡が設置してあって、その一つは直接面会所に繋がっている。実は初回はこの鏡を使ったのだけど、実際に子供たちを歩かせて見たところ意外とこの城から収監所までは距離があるのでこれは大変なんじゃないか? と思ってそちらにも、もう一つ設置したという訳なのよ。まぁ初回に歩いてもらった時は、この城の庭が珍しいらしくてきょろきょろと周りを見渡しながら喜んで歩いていたらしいけどね
さて、こうして私たちは転移門の鏡を潜り抜け、全員そろってボウドアの村の近くにある館本館のエントランスに降り立った。すると私たちの到着に気が付いた二人のメイドが足早に近づき、並んで頭を下げる
「「お待ちしておりました。アルフィン様、シャイナ様」」
「二人ともご苦労様。儀式魔法の観覧席の設置は進んでる?」
「はい、もう殆ど出来上がっております。テントと魔法の明かりの設営はもう終わっており、どの席からも見やすいようにと指示されておりました階段状の台も設置済みです。後はお越しになったお子様たちの人数を確認後、その数に合わせて椅子を並べれば完成になります」
「館に到着した子供達には最終セッティングが終わるまでの間、館の庭にて立食形式でお菓子と果樹水を楽しんでもらう予定になっており、そちらのテーブルセッティングはすでに完了しております」
「解ったわ、ご苦労様。それでは予定通り、ヨウコは会場まで案内お願いね。後、ココミはセルニアをお願い」
「「畏まりました」」
そこで待っていた二人のメイド(会場設営責任者のヨウコと料理および宿泊責任者のココミ)に会場の状況を聞き、ヨウコには私たちと、ココミにはセルニアと同行するようにそれぞれ命じる
セルニアをココミと同行させる理由は今回のお泊り会の食事を城で作るので、その出来上がった料理を運ぶ為に城の厨房と別館A棟の厨房をつなぐ転移門の鏡を臨時に設置する事にしたから。それでその鏡なんだけど、まずギャリソンから託されたシャイナが衣裳部屋まで運び、部屋を出る前にそれをセルニアが受け取ってアイテムボックスに入れて持って来ている。でも、そのセルニアはここに来るのが初めてで設置場所である別館A棟もその厨房の場所も知らないので、その設置場所までココミに案内をして貰おうという訳なのよ
場所が解らないのならば知っている者がここで鏡を受け取ればいいんじゃないかと言う話にもなりそうなものだけど、なぜそうしないかと言えば料理を運ぶために普通のものより少し大きな鏡を用意したからで、流石にこの大きさの転移門の鏡では重すぎて高レベルで身体能力に優れたセルニアはともかく、一般メイドのココミでは持ち上げて設置するなんて事はとてもできそうにないから直接その場所までセルニアを連れて行って設置してもらう方が手っ取り早いのよね
「それじゃあセルニア、また後でね」
「はい、アルフィン様。また後ほど」
こうしてセルニアと別れ、ヨウコに案内されて本館から庭へ出る
「あっ来た! あるさ〜ん、こっちこっち」
すると門の近くに設置されていたテーブルセットに座っていたまるんがこちらに気付き、手を振ってきた。そしてその横では、まるんの言葉で私たちに気付いたユーリアちゃんが椅子から立ち上がってお辞儀をしている。うんうん、礼儀正しい子だ。そんな関心をしている、まさにその時! 私の目にとんでもない破壊力の光景が飛び込んできた
はうぅっ! 姉のユーリアちゃんの姿を見て妹のエルマちゃんがあわてて立ち上がって横でお辞儀をしてる。その姿と来たら。ああ、なんて可愛いんだろう・・・
「うぅ〜、連れて帰りたい!」
そして後ろからはその光景を見たからであろう、悶絶するような声色でシャイナがとんでもない事を呟いていた。だっダメよシャイナ、そんな事を言っては。思わず「許可します!」なんて言いそうになったじゃない。ああ、でも、本当に可愛いなぁ。小動物系の保護欲を刺激される仕草と言うか、子供特有のたどたどしい態度がなんとも可愛らしい。本当に連れて帰りたくなる可愛さだわ
そんなこんなで思わずほほが緩みそうになるも、シャイナをたしなめる振りをして後ろを振り向いた隙に何とか立て直して微笑をつくり、意識を切らさないよう気合を入れてゆっくりとまるんたちの元へ歩を進めるアルフィンだった
あとがきのような、言い訳のようなもの
本当儀式魔法(偽)まで行くかな?なんて思っていたけど、その前段階が思った以上に長くなってしまいました
さて、城の警備についての話が今回出てきますが、ナザリックに比べるとかなりゆるゆるです。と言うのも、アルフィンたちはガチ勢だったアインズたちと違って思いっきりエンジョイ勢だった為、本当の意味で城を攻められると言う事を想定していなかったからです。その証拠に、このシステムだと、高レベルのプレイヤーならまず転移して門前に移動>即座に城に突入して転移されてしまったらギミックを発動する暇なんかないのですから、ゆるゆるとしか言いようが無いんですよね
まぁ、元々がお金を稼ぐくらいしかしていない超善良ギルドですから他から恨まれる事も無く、また、上位の戦闘系ギルドとも仲が良かったようなギルドですから襲った場合リスクはかなり高いのに、城の中にはお金意外特に貴重なアイテムは無し。そんなギルドを襲っても周りからは叩かれるだけでメリットは無かったでしょうから、こんな危機感が無いのも当たり前なんですけどね
1500人もの大軍勢に攻められるような超有名悪役ロールプレイギルドであるナザリックとは根本が違うのでこんな物なのでしょう
あっ転移門の鏡ですが、これだけは外から直接城の中へ飛べるようになっています。まぁこれに関してはオーバーロードでも最下層までは直接飛ばないもののログハウスから内部に飛ぶ場面があるし、次の鏡からは直接9階層まで飛んでいるので、あのマジックアイテムはただ2点間をつないでいるだけだから転移阻害がされていても問題なく使える物なんだろうなぁなんて考えていますが
それと舞台用ドレスの数ですが、これはユグドラシル時代にコンセプトパーティーホールで色々なショーを行ったりアニメなどのコスプレをしての接客等を約10年間行っていたので、その間に溜まりに溜まってこれだけの数が衣裳部屋に入れられているという設定です。因みにこれらも最低限の物ではありますが魔法装備ですので、誰が着てもサイズは合うようにできています。接客メイドの人数、多いですからそれぞれ専用に作っていたら大変ですからね
また、本文でも舞台用ドレスと出ている通り、普段外出時に着るためのドレスなどは当然別にあったりします。まぁ、こちらは普通のドレスではなく装備の外見を変えた物ですが